FXでは損切りが非常に重要だと言われています。しかし、多くの人が具体的な損切りの方法について知識がないかもしれません。損切りのポイントを決定する方法は一つではありませんが、総資金の2%を目安にする考え方もあります。
今回は、資金管理としての損切りのアプローチや、損切りポイントの設定方法、そして損切りを徹底する効果的な方法などについて解説します。
・最大損切り幅の目安は、総資金の2%程度。
・総資金の2%と最大損失から、ポジションの数を調整しましょう。
・損切りの徹底には、メンタル管理や注文機能の活用、トレード記録も大切。
FXの損切りとは?損失を抑える重要性
「損切り」とは、ポジションを取った後に相場が予想と逆方向に動いた場合、含み損が膨らむ前に損失を確定させることを指します。FXだけでなく、株取引や商品先物取引など、広く相場全般で用いられる用語や考え方です。
ここでは、損切りの重要性や損切りを怠ることがもたらす影響について解説します。
FXでは損失を抑えることが重要
為替相場の動きは予測が難しく、勝率100%で利益を出し続けることはできません。利益確定を一括で行う場合、勝率が70%でも至難の業と言えるでしょう。利益確定を小さくするほど、勝率は上がりますが、たとえ勝率が高くても1回の大きな損失がトータルでマイナスになる可能性もあります。
こうした手法は、「勝つのが当然」のような気持ちになりやすいので、注意が必要です。負けが続くとメンタル面で崩れて損切りができなくなり、「コツコツドカン」を引き起こすこともめずらしくありません。
FXでは、優位性が高い行動を取ってもあっさり負けてしまうことがよくあります。負けを受け入れて被害を抑え、トータルでプラスにすることがFXで勝ち組になるコツと言えるのです。利益が伸びるかは相場次第ですが、損失はトレーダーがコントロールできます。損切りをマスターすることが、FXで成功する第一歩と言えるでしょう。
損切りをしないとどうなる?
FXで損切りをせずにポジションを保有し続けると、含み損が増加してしまいます。例えば、「ここで損切りすれば、給料の半分がなくなる」などといった考えが損切りを妨げ、結果的には「塩漬け状態」に陥ることがあります。
現物株では、リーマン・ショックなどの市況変動により数年から数十年にわたり塩漬けにされることもまれではありません。しかし、FXではレバレッジの影響が大きく、含み損がある水準を越えると証拠金不足でロスカットが行われ、ポジションが強制的に決済されることがあります。
損切りをしないと、連鎖的な悪影響が生じることもあります。一般的な例として、ナンピン(価格が下がると追加で購入して平均取得価格を引き下げようとする行為)が挙げられます。しかし、相場観が外れている場合や適切なエントリーポイントが見つからない場合もあります。無謀なナンピンは資金の喪失に繋がり、慎重さが求められます。
同じポジションを逆方向にとる「両建て」もありますが、これはしばしば現実逃避の手段に過ぎません。損切りができなかった場合、その事実は「自分はトレードに向いていないのではないか」という精神的な傷を残すこともあります。こうした理由から、損切りの重要性を理解し、実践することがトレーダーにとって重要です。
FXで損切りするなら、総資金の2%が目安!
最大損失をあらかじめ決めておくことは、損切りを徹底するための一つの方法です。しかし、その決め方が理解されていない方も多いかもしれません。
ここでは、多くのトレーダーが採用している最大損失を総資金の2%程度とするルールを紹介します。
最大損失を総資金の2%にする理由
1回のトレードで冒すことができるリスク、すなわち損失の限度額を事前に定めておくことは、大きな損失を回避する手段となります。多くのトレーダーが採用しているのが、最大損失を総資金の2%程度に設定するルールです。
このルールが一般的に知られるようになった背景には、アレキサンダー・エルダーの『投資苑2』(パンローリング刊)という投資本が大きな影響を与えています。エルダーは多くの成功したトレーダーが1回のトレードでリスクを口座資金の2%以内に抑えていることを発見し、トレーダーが不可避な資金減少に耐えるためには最大損失を2%程度に制限すべきだと説明しています。
ただし、成功したトレーダーがこのルールを実践しているからといって、全てのトレーダーが2%ルールに同意するわけではありません。そこで、最大損失が2%程度であれば、連敗が続いても大きな損失には至らないことを説明しています。以下では、損切りの幅を総資金の10%とした場合と2%とした場合を比較してみましょう。
最大損失を総資金の10%とした場合
総資金が100万円で、最大損失を10%と設定した場合、5回の連敗による資金残高は以下の通りです。5回のトレードで合計409,510円の損失が発生し、資金残高は約59%に減少します。
この資金の減少により、取引量を維持するには以前と同じ取引量では対応できません。レバレッジを増やすことも考えられますが、同じトレード手法を維持する場合、ますます資金を減らす可能性があります。資金が減少すると、リスクを高めることになり、口座資金が枯渇する典型的なパターンです。特に投資初心者はこうしたリスクに注意が必要です。
最大損失を総資金の2%とした場合
総資金が100万円で、最大損失を2%と設定した場合、5回の連敗による資金残高は以下の通りです。5回のトレードで合計96,080円の損失が発生し、資金残高は約90.3%に減少します。
この結果から、5連敗しても90%以上の資金が残っているため、資金を元の額に戻すのは難しくありません。なお、10連敗しても80%以上の資金が残存しています。
継続的に利益を上げているトレーダーが5連敗することは、ほとんどないと言えます。例えば、勝率が50%でも、5連敗する確率は「0.5×0.5×0.5×0.5×0.5=0.03125 ≒ 3%」に過ぎません。したがって、このルールを実践することで、少なくともかなり長い期間(取引回数)にわたり、トレーダーとして生き残る可能性が高まります。
複数のポジションを持つ場合は?
複数のポジションを持つ場合、複数の通貨ペアで取引するケースを考えます。
例えば、総資金が20万円であり、10万円ずつ2つの通貨ペアでトレードすると仮定します。この場合、各ポジションの最大損失を1つのポジションで総資金の1%と考え、合計で総資金の2%になるように調整します。
ただし、複数のポジションを取るかどうかは不確定であり、事前に調整が難しいこともあります。したがって、ポジションを取っているトレードが損失で終わった場合は、残り口座資金で次のポジションを取る際に考慮します。そして、その際には口座残高を元にして、次のポジションでも総資金の2%以内の損失になるように調整します。
FXで損切りを2%にする場合の注文方法
ここでは、FXでの損切りを2%にするための注文方法を解説します。
総資金から最大損失を求める
資金総額から最大損失を算出するには、総資金の2%を掛けてリスクを許容できる金額を求めます。例えば、総資金が100万円の場合、1回のトレードで失ってもよい最大損失額は「100万円 × 2% = 2万円」となります。もし、総資金100万円から50万円相当のポジションを2つ保有する場合、各トレードでの最大損失は資金の1%(=1万円)となります。
なお、『投資苑2』によれば、1カ月の損失が総資金の6%以上に達した場合、その月のトレードを中断することが適切とされています。この資金管理の手法は、相場と投資スタイル・手法が調和しない期間を回避するのに有効です。また、冷静な判断を取り戻すためや、手法や戦略を見直すためにも役立つでしょう。
損益率から利益確定と損切りのポイントを決める
1ドルが150円の為替レートの場合、新規で買いのエントリーを考える際には、事前にリスクリワードを「1:3」と設定している場合、通常は損切り幅からポイントを決定します。
例えば、チャート分析に基づき損切りポイントを149円90銭と判断した場合、それに基づいて利益確定ポイントを150円30銭に設定します。これにより、取引の利幅は30銭(30ポイント)となり、損切り幅は10銭(10ポイント)となります。このようにして、リスクリワード比率が1:3のトレードプランが構築されます。
ただし、エントリー前には利益確定が現実的かどうかを確認し、難しければトレードを見送ることも検討するべきです。市場状況やチャートの変動性が高い場合や、予測が不確かな場合は、慎重な検討が必要です。リスク管理を考慮し、トレードプランの構築と実行に際しては冷静な判断が求められます。
最大損失から持ち高を割り出す
損切りポイントから2%ルールを守った持ち高を求めるには、以下の計算式を使います。
持ち高=総資金×2%÷損切りまでのポイント数÷100
例えば、総資金が100万円で損切りまでのポイント数が10ポイントの場合、以下のように計算します。
通貨数=100万円×2%÷10ポイント÷100
=1,000,000×0.02÷10÷100
=20枚(=20万通貨)
最大20万通貨までなら損切り幅を2万円以内で抑えられるため、2%ルールを守れます。総資金やパーセンテージ、ポイント数などの数値を変えて持ち高を計算できるので、いろいろ試してみてはどうでしょうか。
ExcelやGoogleスプレッドシートを活用して、値を入力すると自動的に通貨数が計算されるようにしておくのも便利な方法です。
損切りを徹底するために実践したいこと
損切りの重要性を理解しているものの、行動が伴わないことがあります。ここでは、損切りのタイミングを逃さず、資金管理を徹底するために実践したいことを紹介します。
損切りできない人の心理を理解する
FXでの失敗の一因は、トレードに過度に熱中することです。「絶対に勝つ」「損を確定させたくない」といった感情が高まり、冷静な判断が欠如すると、損切りのタイミングを見逃してしまうことがあります。損切りを厳格に行い、着実に利益を積み上げるためには、メンタル面の強化も不可欠です。
そのためには、人間がどのような心理的傾向を持っているのかを理解することが重要です。以下の質問に答えてみてください。
A: 100%の確率で500万円をもらえる
B: コインを投げて表が出たら1,000万円もらえるが、裏が出たら何ももらえない
A: 無条件で借金を500万円減額してもらう
B: コインを投げて表が出たら借金がゼロになるが、裏が出たら借金は1,000万円のまま
期待値(数多く繰り返すとその値に収束する値)が、質問1では500万円、質問2ではマイナス500万円と同じであるにもかかわらず、ほとんどの人は質問1でAを、質問2でBを有利な条件だと思って選ぶでしょう。このことは、人間は平常時に安全確実な方を選び、追い込まれたときはリスクを選ぶ傾向があることを示しています。
トレードに置き換えると、人は含み益が出ているときはそれを確実に得たいと思い、含み損が出ているときは損切りを先延ばしにしてなんとか元に戻らないかと粘ることを意味します。つまり、人間の心は「損小利大」ではなく、「損大利小」になるようにできているのです。
「トータルで勝つ」という、必然的で、確率論的な考え方が重要です。
損切りに便利な注文方法を使う
損切りを徹底するには、エントリーと同時に逆指値注文を入れておくことも大切です。
FXでは以下のような損切りに便利な注文方法もあるので、トレードに活用しましょう。
IFD注文
新規注文は指値または逆指値で設定し、それが執行された後の損切り価格も一緒に設定します。利益確定注文もできますが、資金を守るためには損切りを置いておく方が安全です。
OCO注文
2通りの注文を出し、片方が約定したら、もう片方は取り消しとなる注文です。ポジションを持った後に、OCO注文を使って利益確定注文を指値で、損切りを逆指値で設定することで、レートがどちらに動いても対応できます。
IFO注文
IFD注文とOCO注文を合わせたような注文方法です。新規注文を指値または逆指値で設定し、それが執行されたときの利益確定注文を指値で、損切り注文を逆指値で設定できます。
トレード記録をつける
トレード記録をつけておくことは、資金管理に役立ちます。エントリーしたときに目安としていた損切りラインと利益確定ラインを記録するとともに、実際に損切りや利益確定をしたポイント、損益率などを記録します。特に1回で大きな損失を出しているトレードがあれば、トレードプランが悪かったのか、それとも損切りできなかったのかなどを調べ、次のトレードに活かしましょう。
手書きで記録する良さもありますが、ExcelやGoogleスプレッドシートなどを活用すると、個々のトレードを集計して分析できるので便利です。
トレード記録を付けることは、トレードルールのチェックにも役立ちます。「損切りをできなかったのが悔しい」「メンタルを鍛えなければ」などの反省が並ぶなら、そもそも損切りするルールやレートに自分が納得できているのか確認しましょう。メンタルが弱いのではなく、トレードプランが不明確で、損切りするレートに理由がないことが、根本的な原因である場合が多いからです。
FXの損切りは総資金の2%を目安に!
FXの損切り幅は、総資金の2%が一般的な目安です。5連敗で90%以上、10連敗でも80%以上の資金が残るため、トレードを継続して資金を回復させやすくなります。エントリーする前に総資金と損切りポイントから持ち高を出す計算式もありましたので、トレードプランに加えてみてはどうでしょうか。資金を失う恐怖感も少なくなり、損切りを徹底しやすくなるはずです。資金を守り、利益を積み上げていきましょう。
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