「FXではアノマリー現象が存在するの?」
「アノマリー現象が起こる理由がわからないのですが…」
と思っている方も多いのではないでしょうか。
アノマリー現象には理論的に説明できないもので、FX取引を行う際には把握しておくべき現象です。
直接トレードに利用することは難しいかもしれませんが、「事前に市場の暴落に警戒する」「月ごとの価格変動の傾向を把握しながら取引する」といったことはできます。
この記事を読むことで、どのようなアノマリー現象があるのかを知ることができます。
ぜひ、最後までお読みください。
アノマリー現象とは
「アノマリー現象」とは、理論的に説明ができない現象のことで相場におけるジンクスみたいなものです。相場での経験則もアノマリーに含まれます。
例えば、月末のロンドンフィキシングもアノマリー現象に含まれます。
ロンドンフィキシングは、ロンドン市場で顧客向けの外国為替取引のレートを決めるために毎日行われています。月末のロンドンフィキシングでは、機関投資家が大口の注文を行います。さらに、イギリスの企業は月末や月初に決算を行うため、輸出企業によるポンドの買い戻しが増え、ポンドが上昇しやすくなります。
相場の動きには理論的に説明できない要素も存在しますが、アノマリー現象に従って相場が動くケースは珍しくありません。
主な月ごとのアノマリー現象
為替相場は月ごとにドル高円安や円高ドル安の傾向があることがありますので、まずは月ごとのアノマリー現象を把握しておきましょう。
1月は、1年の初めの月であり、多くのトレーダーが値動きに注目
「1月効果」と呼ばれるアノマリー現象があり、1月の相場傾向がその年の値動きと同じ方向になりやすいとされています。つまり、1月の相場を観察することで、その年のドル高円安や円高ドル安の傾向をある程度予想できる場合があります。
2月には、円高方向に動きやすいアノマリー現象がある
この傾向の要因として、2月にアメリカ国債の償還や利払いがあることが挙げられます。債券の償還や利払いが行われると、日本の投資家がドルを円に換える必要が生じるため、円高方向に相場が動く傾向があります。
3月は、円高ドル安の動きが見られることがある
日本企業の多くが3月に年度決算を行うため、海外で得た利益や投資した資金を円に換える必要があります。このため、ドルを売って円を買う需要が増えることで円高ドル安の傾向が生じるとされています。
4月は、2月や3月とは逆にドル高円安の傾向がある
その理由は、以下のとおりです。
- 日本の機関投資家である多くの企業が4月に新年度を迎え、決めた予算に基づいてリスク資産の買い増しが行われることが多いため。
- ゴールデンウィークに備えて、日本人投資家が現地の通貨に両替するため、円を売ってドルを買う需要が生じることがあるため。
- 外国人投資家が確定申告の期限が終了し、還付金を受け取ることができるため、リスク資産の買い増しに積極的になることがあるため。
これらの理由から、ドル高円安の傾向が見られることがあります。
5月には、「セル・イン・メイ(SELL IN MAY)=5月に株を売れ」という格言がある
この格言は、株式市場で一般的に知られており、5月に株が売られる傾向があることを示唆しています。株が売られると、通常は円高ドル安の相場が生じるため、トレーダーは注意が必要です。
また、5月は日本の大型連休であるゴールデンウィークがあります。この期間は日本市場の参加者が減少するため、小さなトリガーでも相場が大きく下落しやすい傾向があります。
さらに、日本企業はゴールデンウィーク中に休業する一方で、アメリカの日本法人は通常通り営業するため、ドルを円に換え続ける需要があることも円高ドル安の要因となります。
6月は、一般的にアメリカの株価が下落しやすい
日本やヨーロッパの企業の一部も6月に決算発表を行いますが、3月や12月ほど頻繁ではありません。そのため、他の月に比べて相場を大きく動かす材料が少なく、調整局面に入りやすい月とされています。
夏休みに入ると、外国人投資家が長期休暇を取るため、市場参加者が減少
この時期は「夏枯れ相場」と呼ばれ、ドル安の傾向が見られることがあります。また、日本でも8月にお盆休みがありますので、注意が必要です。
過去には、2007年や2009年、2011年、2013年において、この時期に大きな急落が発生した例があります。
したがって、8月になって円安傾向が続いていても、急に円高に転じる可能性があるため、慎重に注意する必要があります。
9月から10月は大相場が発生しやすい
特にアメリカの株式市場では、10月に株価が弱くなりやすい「10月効果」と呼ばれるアノマリー現象が存在します。
過去、1929年の世界恐慌で株価が下落したブラックチューズデーは10月29日でした。1987年のブラックマンデーは10月19日。2008年のリーマンショックでは、10月28日に日経平均は一時6,000円台(26年ぶり安値)をつけるほど下落しています。
10月が暴落のイメージを持つ投資家も一定数存在するため、特に警戒して相場を観察する必要があります。
11月は月末に向けて相場が反転しやすい
これは9月から継続したトレンドがポジション調整によって終わりを迎えるため、月末に向けて相場が反転しやすいと言われています。
また、毎年11月の最終週は、日本とアメリカの両市場で株価が高い傾向があります。
12月は「クリスマス相場」とも呼ばれ、相場が荒れやすい
クリスマスになると、多くの国で市場が休場となりますので、市場の活気が低下します。特に、12月のクリスマス前の1週間は市場参加者が急激に減少するため、値動きが大きく荒れる可能性があります。
したがって、急落に対して注意が必要です。
毎月起きる可能性のあるアノマリー現象について
週初め(月曜日)
週の初め(月曜日)には市場の流動性が低く、価格変動が緩やかになることがあります。このため、一部の投資家やトレーダーは週初めの取引を控える傾向があります。
ゴトー日
「ゴトー日」とは、数字に5と10が含まれる日のことを指します。
ゴトー日は日本の輸入企業がドル決済(円を売ってドルを買う)をするため、ドル高円安の傾向があると言われています。
特に東京時間の値動きに注意が必要です。
水曜日スワップ
FX取引では、一部の通貨ペアにおいてポジションを保有し続けると、毎日スワップポイント(金利差によるポジション保有者への利息)を受け取ることができます。
ただし、為替市場が閉場している土日にはスワップポイントが発生しないため、その代わりとして水曜日に週末分のスワップポイントがまとめて支払われる仕組みがあります。
そのため、水曜日には金利の低い日本円を売って、高金利通貨を買うトレーダーが増える傾向があります。これにより円安傾向が生じることがあります。
政治・イベントなどのアノマリー現象
FXのアノマリー現象は時期的なものだけでなく、政治・イベントに関わるものもあります。
アメリカ大統領選挙時とその翌年はドル高円安になりやすい
アメリカ大統領選挙の年とその翌年には、ドル高円安になる傾向があります。過去のデータを見てみると、1984年以降のアメリカ大統領選挙が行われた年のドル/円相場では、ドル高円安が7回、円高ドル安が3回となりました。
同様に、選挙が行われた翌年のドル/円相場でも、ドル高円安が7回、円高ドル安が3回となっています。
アメリカの大統領選挙は世界経済にも影響を与える大きなイベントであり、為替相場の動きは経済情勢によって変化します。したがって、大統領選挙後にドル高円安になるという明確な法則ではなく、経済情勢や市場参加者の期待によって相場が変動することを考慮する必要があります。
大荒れになりやすい「ジブリの法則」
金曜ロードショーでは、スタジオジブリの作品が放送されることがあります。一部の人々の間では、金曜ロードショーでジブリ作品が放送されると、翌週の月曜日は株や為替が大荒れになる傾向があるというアノマリーが広まっています。
しかし、このアノマリーについては明確な根拠はありません。金曜ロードショーの放送時間とアメリカの雇用統計の発表時間が被っていることが原因の1つとして指摘されていますが、経済データや為替相場の変動には複数の要素が関与しており、単一のイベントだけで相場の変動を説明するのは困難です。
日銀出身者が日銀総裁に就任すると円高になりやすい
日銀出身者が日銀総裁に就任すると、円高になる傾向があるというアノマリー現象があります。
1979年以降、日銀総裁に就任した人物は現在の植田和男総裁を含めて9人います。そのうち日銀出身者は以下の5人です。
- 白川方明(2013年3月 – 2013年3月) 円高ドル安
- 福井俊彦(2003年3月 – 2008年3月) 円高ドル安
- 速水 優(1998年3月 – 2003年3月) 円高ドル安
- 三重野康(1994年3月 – 1998年3月) 円高ドル安
- 前川春雄(1984年12月 – 1989年12月) 円安ドル高
これらの日銀出身者が日銀総裁に就任した際のドル/円相場の値動きを見てみると、いくつかのケースで円高ドル安の傾向が見られます。ただし、一律に当てはまる法則ではなく、個々の要因や時期によって異なる可能性もあります。
アノマリー現象としての観点からは、日銀出身者が日銀総裁に就任すると、一定の影響がある可能性があると言えます。
まとめ
「投資」と聞くと、難しく考えがちですが、アノマリー現象の話を聞くと、なんとなく身近に感じることができるかもしれません。どんなことでも過去を知ることは重要ですよね。
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