この記事では、分散投資についての疑問を解消します。分散投資とは何か、それによってリスクがどのように軽減されるのか、そしてどのように行うのかについて説明します。分散投資は、資産を異なる対象、地域、時間に分けて投資する方法で、リスク管理の一つです。
分散投資の方法やその利点、欠点についても解説しますので、さまざまな分散投資の選択肢を検討できるようになるでしょう。
「分散投資」は、投資対象や投資のタイミングなどを1つ、1回に集中させるのではなく、いくつかにわける投資手法を指します。「長期投資」や「積立投資」と並んで、投資初心者が実践すべき“投資の王道”としても知られています。
それでは“王道”といわれる所以でもある、分散投資のメリットについて見ていきましょう。
分散投資のメリット
リスクを抑える方法の一つとして、「分散投資」があります。この分散投資という考え方は、「1つのかごに全ての卵を盛るな」という言葉もある通り、古くから資産運用において重要視されてきました。
1つのかごに全ての卵を盛ると、そのかごを落としたときに全ての卵が割れてしまいます。しかし、いくつかのかごに卵を分けて盛れば、仮に一つのかごを落としてその中の卵が割れても、残りのかごの卵は無事です。
投資の世界でも同じ考え方が適用されます。たとえば、株式を購入した場合、企業の業績や市場の需給に応じて株価が変動します。もし一つの銘柄に資金を集中させて投資し、その銘柄が急落した場合、大きな損失を被る可能性が高まります。
しかし、2つ以上の異なる銘柄に資金を分散して投資すると、一つの銘柄が値下がりしても、他の銘柄の利益でカバーすることができ、投資資金全体でリスクを分散させ、収益を安定させることができます。
要するに、リスクを回避するためには、値動きが異なる複数の資産を組み合わせて投資することが重要です。これによって、投資ポートフォリオ全体のリスクを軽減し、安定した収益を目指すことができます。
※北陸銀行HPより転載
分散投資の考え方
分散投資には大きく分けて3つの考え方があります。
その3つとは、(1)銘柄分散、資産分散、(2)通貨分散、(3)時間分散です。
銘柄の分散、資産の分散
「分散投資」という言葉を聞いたとき、多くの人が最初に思い浮かべるのは、おそらく「銘柄の分散」でしょう。
株式投資を考える場合、A社の株だけでなく、B社の株も持つというイメージです。このアプローチの要点は、投資資金を単一の投資対象に限定せず、複数の対象に分散して投資することです。
たとえば、A社の株にだけ集中して投資していた場合、もしA社が倒産した場合、そこに投資していた資金は全て失われてしまいます。しかし、別のB社の株にも投資していれば、資産は減少するかもしれませんが、すべてを失うリスクを回避できます。
※みずほ証券より転載
さらに、同じく分散投資でも、「AとBだけ」ではなく、「AとBとCとD」など、より多くの対象に分散させることで、リスクをより効果的に抑えることができます。
また、「銘柄の分散」だけでなく、「資産クラス(資産の種類)の分散」も重要です。たとえば、「株式」「債券」「不動産」「金」は全て異なる資産クラスです。先述の「A社やB社」は異なる銘柄ですが、株式という点では同じ資産クラスに属します。
資産の分散戦略を実践するためには、以下のような方法が考えられます:
- 預貯金だけでなく、投資を始めてみることで資産を分散する。
- すでに株式投資を行っている場合、債券投資にも挑戦する。
- 債券を中心に運用する投資信託を保有している場合、他の商品で運用している投資信託にも新たに投資する。
これらの方法を通じて、資産の分散を実現し、リスクを適切に管理できるでしょう。
地域の分散
投資において、「地域(エリア)の分散」も有効な戦略です。投資対象の地域は大まかに「日本国内」と「海外」に分けられ、さらに詳細には「アメリカ」「中国」といった個別の国や、「欧州」「オセアニア」といったエリア、そして「先進国」「新興国」などのカテゴリに分けられます。
資産が現在「日本株+日本国債」に集中している場合、新たに米国株に投資するか、全世界を対象にする投資信託を購入するなど、投資地域を分散させることが考えられます。
通貨の分散も有用な戦略です。単一の通貨や国に依存せず、複数の国の通貨に投資することで、リスクを分散させることができます。例えば、「円」だけでなく「ドル」などの通貨も資産ポートフォリオに含めることで、通貨の変動に対するリスクを低減させることが期待できます。
時間の分散
投資において、タイミングを分散させ、複数回にわたって投資を行う「時間の分散」も有効です。
投資に成功するためには、適切な投資対象を選ぶことだけでなく、適切なタイミングで投資を行うことも非常に重要です。しかし、株式や投資信託などの投資商品の価格は日々変動しています。理想的には、価格が低い時に購入し、高い時に売却することが望ましいですが、タイミングを誤ると、高値で購入してしまい、低い価格で売却することになり、大きな損失が生じる可能性があります。そのため、一度に大きな金額を投資するのではなく、少額ずつ複数回に分けて投資を行うことで、リスクを分散できます。
特に、毎回一定額を自動的に投資する「積立投資」は、誰にでも簡単に時間分散を実践できる方法です。このアプローチは「ドルコスト平均法」とも呼ばれ、一般的に知られている投資戦略の一つです。
分散投資における注意点
分散投資を実践する際に注意すべき点について見てみましょう。
「悪い分散投資」とその例
分散投資は単に「とりあえず投資先を複数にすること」ではありません。分散投資の基本は、値動きが異なる資産や投資対象を組み合わせることです。
たとえば、株式投資で異なる銘柄に投資したとしても、これらの銘柄が同じ業界に属する場合や、似たような値動きを示す場合、実際には分散投資がうまく機能しない可能性があります。つまり、いざという時に一つの出来事で全ての投資が同じように影響を受ける可能性があるのです。
分散投資を実践するために、投資先の内訳をよく確認しましょう。たとえば、株式投資を例に取ると、同じ業界に依存しすぎていた場合、異なる業界にも資金を分散させることが考えられます。また、通貨や国に偏りすぎていた場合、他の通貨や国にも資産を振り分けることが重要です。
さらに、資産の分散を検討する際には、リスクとリターンのバランスを考慮しましょう。高リスクの資産ばかりで構成されたポートフォリオの場合、低リスクな資産を一部含めることで、リスクを調整することができます。
このように、資産をバランスよく組み合わせる行為を「ポートフォリオの組成」と呼びます。ポートフォリオは一度組んだら終わりではなく、定期的に見直し、リスクとリターンの調整を行うことが必要です。自分の投資目標やリスク許容度に合わせて、最適なポートフォリオを構築してみましょう。
分散投資はリターンも分散される
投資には「リターンを求めるならリスクも高くなる(ハイリスク・ハイリターン)、リスクを抑えるならリターンも少なくなる(ローリスク・ローリターン)」という大原則が存在します。
要するに、高いリターンを追求する場合、それに伴う高いリスクも受け入れる必要があり、逆にリスクを抑えることを優先する場合、リターンもそれに比例して低くなることが一般的です。
たとえば、ある1社の株式が急騰し、元の投資額が2倍になったと仮定しましょう。もし最初に100万円をその1社の株式に投資していた場合、投資額は200万円に増加します。
しかし、同じ100万円を10万円ずつ10社の株式に分散して投資していた場合、1社の株価が急騰しても、それは全体の10%に過ぎず、他の9社の株価が変動しなければ、投資額は最大で110万円までしか増加しません。このように、分散投資を行った場合、特定の銘柄に「集中投資」した場合と比べてリターンの一部を取り逃す可能性があることを理解しておくべきです。
要するに、分散投資はリスクを分散させるために行うものであり、その代償としてリターンも分散されるというデメリットが存在します。投資家は自身のリスク許容度や投資目標に合わせて、リスクとリターンのバランスを検討することが重要です。
まとめ
分散投資は単に「別々の投資先を選ぶ」だけではありません。銘柄のほか、資産、地域、時間も分散させるべき対象になります。
まだ投資に慣れていない方や、リスクを抑えて堅実に投資していきたい方は、先述の「悪い例」のようにならないよう気を付けつつ、分散投資に挑戦してみてはいかがでしょうか。
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