ファンダメンタルズ分析がマーケットの基本
マーケットの分析方法には主に2種類あります。ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析です。
ファンダメンタルズ分析は、現在の経済状況を見ながら将来の値動きを予測するのに対し、テクニカル分析は、過去のチャートから将来の値動きを予測します。
しかし、ファンダメンタルズ分析を敬遠する投資家は少なくありません。なぜなら、今のマーケットに参加している多くの投資家がテクニカル分析を中心にしているからです。
そのバックグラウンドには短期トレードが主流になってきていることがあり、中長期でポジションを取って保有するというよりも、短期で売買を繰り返し、回転させていく投資家が非常に多くなってきています。
その結果、ファンダメンタルズ分析が軽視され、直近の値動きをテクニカル分析をして取引きする人が多くなってきました。
これは決して悪いことではありません。どんな方法でも勝つことが最も重要なことだからです。
ただ、マーケットの基本はファンダメンタルズ分析になりますので、基本的な分析方法だけでも身につけていただきたいと思います。

ウクライナ情勢も、コロナ禍の相場もファンダメンタルズです。
大きな利益を狙うにはファンダメンタルズを攻略する必要がある
ファンダメンタルズを要因として大きく動き出したマーケットは、テクニカル分析ではなかなか対応できません。従って、大きな利益を狙うには、ファンダメンタルズ分析をマスターする必要があります。
普段はテクニカル分析を中心にしている投資家でも、ファンダメンタルズ分析を知ることで大きな武器になります。
ただ、ファンダメンタルズ分析を利用して「経済を見て取引する」と行っても、幅が広すぎて何を見ていいのかわからない人も多いでしょう。
この記事では要点を絞って、ファンダメンタルズ分析で着目すべきポイントについて紹介します。
ファンダメンタルズ分析で重要なポイント
ファンダメンタルズ分析でポイントとなるのは次の2つです。
・マーケットのテーマ
ファンダメンタルズ分析とは、経済指標や要人発言、政策、地政学リスクなどからシナリオを考えることです。経済指標とは、各国が発表する自国の経済分析データです。
ではどの経済指標を見ればいいのでしょうか。
重要な経済指標には「政策金利」「雇用統計」「GDP」「物価指数」「小売売上高」などがあります。
これらはマーケットを動かす重要指標になりますのでぜひ押さえておきたいところですが、最も重要な経済指標は「政策金利」になります。
景気の良し悪しは雇用統計ゃGDPなどの結果を見ればわかりますし、インフレ・デフレの判断は、物価指数を見ればわかります。
これらの経済指標結果を基に各国の中央銀行は「政策金利」を操作して最終的に経済を安定させるようにコントロールしています。つまり、金利動向さえしっかり把握していれば、大きな経済の勢いを掴むことができるのです。為替は金利によって動いており、極論すれば、お金は金利の高いところに流れていきます。その基本となる政策金利の動向をしっかり把握しておく必要があるのです。
簡単に言えば、アメリカが政策金利を引き上げると、アメリカにお金が集まり、ドルが上がる可能性が高くなります。ドル円であればアメリカと日本、ユーロドルであればEUとアメリカ、2国間の政策金利の動向によって為替レートが変動します。

金利の上がっている通貨を買い、下がっている通貨を売ればいいのですね。
よって、どこの国の金利が上昇して、どこの国の金利が下がっているのかを見ることが大事です。
金利の上がっている国の通貨を買って、下がっている国の通貨を売る、というのがシンプル且つ王道のトレードです。
実際に政策金利をチェックする際には、先行きの方向性を確認しなければなりません。例えば、中央銀行が金利を上げるときには、同時に「今後どうしていくのか」のメッセージを発信します。それを確認して引き続き政策金利を引き上げていく方針であれば、その国の通貨が上がる可能性が高くなります。
※参考【主要各国の政策金利の推移】
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | |
USD | 0.25 | 0.25 | 0.50 | 0.50 | 1.00 | 1.75 | 2.50 | 2.50 | |
JPY | -0.10 | -0.10 | -0.10 | -0.10 | -0.10 | -0.10 | -0.10 | -0.10 | |
EUR | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.00 | 0.50 | 0.50 | |
BGP | 0.25 | 0.50 | 0.75 | 0.75 | 1.00 | 1.25 | 1.25 | 1.75 | |
AUD | 0.10 | 0.10 | 0.10 | 0.10 | 0.35 | 0.85 | 1.35 | 1.85 | 2.35 |
NZD | 0.75 | 1.00 | 1.00 | 1.50 | 2.00 | 2.00 | 2.50 | 3.00 | |
CAD | 0.25 | 0.25 | 0.50 | 1.00 | 1.00 | 1.50 | 2.50 | 2.50 | 3.25 |
CHF | -0.75 | -0.75 | -0.75 | -0.75 | -0.75 | -0.25 | -0.25 | -0.25 |
アメリカはマーケットを誘導できる唯一の国
政策金利が重要という話をしましたが、特にアメリカの政策金利が発表されるFOMC(連邦公開市場委員会)だけは、最低でも追いかけなくてはいけません。
なぜアメリカの動向を知っておく必要があるのでしょうか。
それは基準通貨であるドルが世界の決済通貨となっているため、すべての資産に繋がっていること。さらに、アメリカはITや金融を筆頭に世界の株式時価総額のうち4割を占めており、世界経済はアメリカを中心に回っているからです。そのアメリカ経済をコントロールしているのがFOMCになりますので、その重要性は理解できると思います。
また、アメリカは「行きたい方向にマーケットを誘導する」ことができる唯一の国です。だからこそ、アメリカがどこに向かっているのか、どこに向かいたがっているのか、ここだけは把握しておかなくてはなりません。
・通貨(FX) = 上昇
・株式 = 下落
・債券 = 下落
金利の上昇は、企業の業績にも影響します。金利が上昇すると、利息の負担が大きくなるので業績を圧迫します。
2022年3月からアメリカが政策金利を引き上げて(0.25% → 0.5%)、代表的な株価指数であるS&P500やナスダックが下がりました。金利の変化は通貨だけでなく、株式や債券など、すべての市場が金利と連動しているのです。
政策金利の発表は年に8回程度
政策金利の発表は毎月ある訳ではなく、平均すると1.5ヶ月に1度程度です。最も影響力の大きいアメリカのFOMCは、年に8回程度、政策金利の発表をしますので、中央銀行の政策に目を向けておけば全体像が見えてきます。
貿易収支などの細かい数字はそれほど重要ではなく、それを基に中央銀行が何を考えているのかによってすべてが決まっていきますので、政策金利をしっかり見ていくことが重要なのです。
マーケットのテーマ
景気が良く、金利も上昇局面であれば基本的にその通貨は買われるということを説明しましたが、このような好材料が揃っているにも関わらず、買われない、それどころか売られる場合もあります。
なぜならマーケットが注目している材料がそこではなかったからです。
マーケットには、そのときに話題になっているテーマが存在します。
例えば、2022年4月時点で言うと、ロシア軍のウクライナ侵攻という出来事がマーケットのメインテーマとなっています。「ヨーロッパの経済が落ち込むのではないか」と考えられてヨーロッパの株が売られたり、ユーロが売られたりしています。通常であれば、動きが出る材料となる景気動向や政策金利には反応はなく、有事に強い銘柄が買われる展開となりました。
このようにマーケットの基本となる金利はもちろんですが、それとは別に「いま何に注目が集まり、何をテーマとしているか」を意識しなくてはなりません。
ファンダメンタルズ分析の場合、対象範囲が広く何を見ればいいのかわからないということもありますが、テーマを絞ることで、膨大な情報の中から見るべきものを取捨選択できることも利点です。
ニュースのヘッドラインからマーケットのテーマを知る
ではどのようにしてマーケットのテーマを探し出すのか、簡単に言えば、ニュースのヘッドラインをざっくり眺めて、よく目にするワードがあれば、それが今の市場のテーマと考えて問題ありません。
では、実際の情報入手方法について紹介します。
ブルームバーグやロイターといった金融に強い通信社や、FT(ファイナンシャル・タイムズ)、WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)など、国際的に影響力のある報道機関から情報を集めるのが一般的ですが、FX会社の口座があれば無料で金融に特化したマーケットニュースを読むことができますので、こちらでも問題ありません。
これら報道機関から発信されるニュースの中から、旬となっているテーマのヘッドラインニュースを追いかけつつ、そのインパクト、参加者心理、ポジションの偏りなどを常にアップデートしていく作業をします。時間はかかりますが、この作業を日々積み重ねていくことで、ある程度の予測をすることができます。それによって相場の急変動時などにも落ち着いて対応することができるようになります。
また、速報系の情報では、Twitterが優秀です。ただ、Twitterの場合には、フェイクニュースがあったり、利用する人の情報リテラシーが求められるため、真偽不明の場合は内容を見極める必要があり、注意は必要です。
ファンダメンタルズ分析をトレードに活かす方法
ファンダメンタルズ分析をトレードに活かす王道は、トレンドフォローしていくことです。逆張りの考え方はありません。
「買われている通貨を買い、売られている通貨を売る」
これだけです。
短期トレードの場合、テクニカルへの比重が大きくなることが多いのですが、自分が取りたい方向とファンダメンタルズの方向が合っていれば、より確度の高い取引になります。
また、ファンダメンタルズ分析は、中長期投資のイメージがあり、「短期売買でファンダメンタルズ分析は機能しにくい」と言われますが、有効な分析方法もあります。
例えば、アメリカの雇用統計のようなビッグイベントを控え、その前哨戦である米ADP雇用統計や米新規失業保険申請件数の指標が良好な数字だったとします。市場では期待感からドルが買われやすいバイアス(偏り)となって上昇するのですが、結果発表前の動きというのはあくまで期待感によるもので、実際のファンダメンタルズと乖離している可能性があります。このような場合、仮に指標が市場の思惑通り良好な結果となったとしても、すでに織り込まれた結果として市場の反応は限定的となり、思わしくない結果となれば上昇分は調整され下落幅は大きくなるものです。
上昇は限定的である一方、下落余地は大きいと事前予想を立てることで、短期的な動きにも対応することが可能となるのです。
まとめ
ファンダメンタルズ分析は、一朝一夕で身につくものではありませんが、諦めずに続ければ自然と身につけることができます。
最初はなかなか理解できなくても、いずれ点と点が繋がって線になります。身についたファンダメンタルズは至る所で優位性を利かせることができ、トータルの収支で見れば雲泥の差が出ることとなるでしょう。
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