FXで利益をだすために重要なこと、そのひとつに「損切り」があります。
「損切り」はFX取引においては重要なトレード手法であり、必ずマスターしておく必要があります。実際、損切りができずに大きな損失を負ってしまったトレーダーも存在します。損切りが早ければ損失を小さくすることができますが、タイミングが分からない方も多いのではないでしょうか。
損切りがなぜ重要なのか、また損切りのやり方や適切なタイミングについて解説していきます。
「損切り」とは
「損切り」とは、エントリーした後に為替相場が自分の予測とは反対の動きをした際に、損失を承知でポジションを決済することを言います。損失が少ない段階で早めに判断をし、損失を最低限に抑えるために行うものです。
しかし、「相場が戻るかもしれない」という根拠のない期待から、なかなか損切りに踏み切れなかったり、「資金が減ってしまう」という理由から冷静な判断ができなかったりすることがあります。
FXで利益を得るためには、1回のトレードでどのくらいの損失を許容するか等を事前に決めておき、そのルールを徹底できるようになることが非常に重要です。
「損切り」をしないとどうなる?
FXで損切りをしないままポジションを保有し続けると、「含み損」が増えてしまいます。
「ここで損切りしたら、投資資金の半分がなくなる」などと考えると損切りできなくなり、いわゆる「塩漬け状態」になってしまいます。決済せずに待っていればプラスに転じることもありますが、その可能性に期待することは非常にリスクが高いです。
1ドル=100円の時に1万通貨のドルを買う場合、最大25倍のレバレッジ取引で4万円の証拠金が必要。
仮に5万円入金して取引した場合、相場が動いて1ドル=99円50銭まで円高になったとすると、5,000円の為替差損が発生し、純資産額は4.5万円となります。
ここで相場が戻ることを期待してポジションを持ち続けた後に、さらに円高が進み、結果、純資産額が4万円を下回ると、ポジションを自動的に強制決済する「ロスカット」が執行されてしまいます。
もし、ロスカットが発動する水準よりも手前で損切り決済を行っていたなら、損失は少額で抑えられたにもかかわらず、根拠のない期待で損切りをできずにいると、かえって損失が膨らんでしまいます。仮に決済した後に相場の流れが反転しても、資金があれば再び買いのポジションを建てることができます。損失を拡大することで資金が不足し、相場の波に乗り遅れるなど、機会損失を生むことにもなりかねません。
損切りする目安
最大損失をあらかじめ決めておくことも、損切りを徹底する一つの方法です。
ここでは、多くの人が採用している「最大損失を総資金の2%程度」とするルールを紹介します。
最大損失を「総資金の2%」にする理由
1回のトレードで取るリスク、つまり損失の限度額を決めておけば、大きな損失を防げます。その最大損失を総資金の2%程度を目安に決めている人が多くいます。
ここでは、損切り幅を総資金の10%とした場合と2%とした場合を比較して、最大損失が2%程度であれば、たとえ連敗が続いても大きな損失にならないことを説明します。
最大損失を総資金の10%とした場合
総資金100万円、最大損失10%で5連敗した場合の資金残高は以下のとおりです。5回のトレードで409,510円の損失となり、資金は約59%に減ります。
回数 損失額 資金残高
1回目 ▲100,000 900,000
2回目 ▲90,000 810,000
3回目 ▲81,000 729,000
4回目 ▲72,900 656,100
5回目 ▲65,610 590,490
ここまで資金が減ると、総資金100万円のときと同じ取引量では取引できません。レバレッジをかける方法もありますが、トレード手法が同じ場合はさらに資金を減らしてしまう可能性もあります。資金が減るほどリスクを取ってしまうのは、口座資金がなくなる典型的なパターンです。
最大損失を総資金の2%とした場合
総資金100万円、最大損失2%で5連敗した場合の資金残高は以下のとおりです。5回のトレードで96,080円の損失となり、資金は約90.4%に減ります。
回数 損失額 資金残高
1回目 ▲20,000 980,000
2回目 ▲19,600 960,400
3回目 ▲19,208 941,192
4回目 ▲18,824 922,368
5回目 ▲18,448 903,920
5連敗しても90%以上の資金が残っているため、資金を元の額に戻すのもそれほど難しくありません。ちなみに、10連敗しても80%以上資金が残っています。
0.98の10乗は0.817 10連敗しても817,000円もの資金が残ります。
※勝率50%として、5連敗する確率は、1/32(約3%)、10連敗する確率は、1/1024(約0.1%)
FXで損切りを2%にする場合の注文方法
ここでは、FXで損切を2%にする場合の注文方法を解説します。
総資金から最大損失額を求める
最大損失を求めるためには、総資金に2%をかけてリスクを許容できる金額を求めます。総資金100万円の場合は、「100万円 × 2% = 2万円」が1回のトレードで失ってもよい最大損失額です。
ちなみに、1カ月の損失が総資金の6%以上になった場合、その月のトレードを休んだほうがよいと言われています。この資金管理方法は、相場と投資スタイル・手法がかみ合わない期間を避けるのに効果的です。冷静さを取り戻したり、手法・戦略を見直したりするのにも役立つでしょう。
損益率から利益確定と損切りのポイントを決める
1ドル125円のときに、新規で買いのエントリーをする場合を考えてみましょう。エントリーする前にリスクリワードを「1 : 3」と決めている場合は、損切り幅を決めるのが一般的です。
仮に、チャート分析で理由・根拠がある損切ポイントが、124円80銭だったとします。その場合、利益確定ポイントが125円60銭に決まります。これで利幅は60銭(60ポイント)、損切り幅は20銭(20ポイント)で、リスクリワード「1 : 3」のトレードプランの作成ができます。
最大損失から持ち高を割り出す
損切りポイントから2%ルールを守った持ち高を求めるには、以下の計算式を使います。
持ち高 = 総資金 × 2% ÷ 損切りまでのポイント数 ÷ 100
総資金が100万円あり、損切りまでのポイント数が20ポイントの場合、以下のように計算します。
通貨数 = 100万円 × 2% ÷ 20ポイント ÷ 100 = 1,000,000 × 0.02 ÷ 20 ÷ 100 = 10ロット(10万通貨)
最大10万通貨までなら損切り幅を2万円以内で抑えられるため、2%ルールを守れます。総資金やパーセンテージ、ポイント数などの数値を変えて持ち高を計算できるので、いろいろ試してみることも必要です。
損切りを徹底するために実践したいこと
損切りの重要性を理解しているのに、行動が伴わないことがあります。ここでは、損切りのタイミングを逃さず、資金管理を徹底するために実践したいことを紹介します。
損切りできない人の心理
FXで失敗する原因の一つは、トレードに根拠のない自信などで熱くなりすぎることです。
「絶対勝つ」「損を確定したくない」など、冷静さを失った状態でトレードすると、損切りのタイミングを逃してしまいます。損切りを徹底し、順調に利益を積み重ねるためには、メンタル面の強化も必要です。
そのためには、人間がどのような心理傾向を持っているのか知ることが役立ちます。次の質問に答えてみてください。
Q1. コインを投げてゲームをします。AとBどちらを選択しますか?
A:コインの表裏に関わらず100%の確率で100万円をもらえる
B:コインを投げて表が出たら200万円もらえるが、裏が出たら何ももらえない
Q2. あなたには200万円の借金があります。AとBのどちらを選択しますか?
A:無条件で借金を100万円減額してもらう
B:コインを投げて表が出たら借金がゼロになるが、裏が出たら借金は200万円のまま
期待値(数多く繰り返すとその値に収束する値)は、Q1では100万円、Q2ではマイナス100万円と同じであるにも関わらず、 ほとんどの人はQ1でAを、Q2でBを有利な条件だと思って選びます。このことは、人間は平常時に安全確実な方を選び、追い込まれたときはリスクを選ぶ傾向があることを示しています。
トレードに置き換えると、人は含み益が出ているときはそれを確実に得たいと思い、含み損が出ているときは損切りを先延ばしにしてなんとか元に戻らないかと粘ることを意味します。つまり、人間の心は損小利大ではなく、損大利小になるようにできているのです。
「トータルで勝つ」という、必然的で、確率論的な考え方が重要です。
損切りに便利な注文方法を活用する
損切りを徹底するには、エントリーと同時に逆指値注文を入れておくことも大切です。FXでは以下のような損切に便利な注文方法もあるので、トレードに活用してみましょう。
「If done」(イフダン)のことで、新規注文でのみ選択できます。
新規注文と同時に、その新規注文が成立した際に初めて有効になる決済注文をセットで出すことができる注文方法です。
例えば、「1ドル=130円」のときに新規で買い、「1ドル=135円」になったら決済で売るというような注文を一度に出したい場合に有効です。
「One Cancels the Other」の略で、新規注文または決済注文において、異なる2種類の指値(ストップ)注文を同時に出しておき、いずれか一方が成立したら自動的にもう片方がキャンセルとなる注文方法です。
例えば、現在「1ドル=130円」でドル円の買ポジションを持っていて、「1ドル=135円」になったら利益確定の指値売り、「1ドル=125円」になったら損失限定のストップ売りをしたい場合などに有効です。仮に、先に「1ドル=135円」の値がつき成立した場合、「1ドル=125円」の損失限定のストップ売り注文は自動的にキャンセルとなります。
IFDとOCOを組み合わせた注文方法で、IFDと同様に新規注文でのみ選択できます。
新規注文と同時に、その新規注文が成立した際に初めて有効になる2種類の決済注文( 利益確定のための「指値注文」と損失限定のための「ストップ注文」)を全てワンセットで出すことができる注文方法です。
トレード記録をつける
トレード記録をつけておくことは、資金管理やトレードルールのチェックに役立ちます。
エントリーしたときに目安としていた損切りラインと利益確定ラインを記録するとともに、実際に損切りや利益確定をしたポイント、損益率などを記録します。特に大きな損失を出したトレードがあれば、トレードプランが悪かったのか、それとも損切りできなかったのかなどを調べ、次のトレードに活かしましょう。
まとめ
・最大損切り幅の目安は総資金の2パーセント程度
・総資金の2パーセントと最大損失から持ち高数を調整しよう
・損切りの徹底には、メンタル管理や注文機能の活用、トレード記録も大事
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